国連の定義で、国内避難民(Internally Displaced Persons: IDPs)とは、紛争や暴力行為、深刻な人権侵害や、自然もしくは人為的災害などによって家を追われ、自国内での避難生活を余儀なくされている人々を指します。国内避難民モニタリングセンター(Internal Displacement Monitoring Centre - IDMC)の報告では、2017年の間に、わかっているだけでも、新たに3060万人もの国内避難民が日本も含む143の国と地域で発生しました。このうち、1880万人が災害によって家を追われ、1180万人が紛争によって紛争などによって家を追われたとされています(紛争・災害別の内訳は下記の図を参照)。もちろん、「国内避難民」と一言でいっても、災害時に自治体などによって出された避難勧告などを受け事前に避難できた人から、自宅が爆撃に遭い命からがら逃れてきた人まで、非自発的な移動[Displacement、以下強制移動]の経験とそれによって人々が被ることになった影響は、千差万別です。しかし、世界中で強制移動を強いられている人の数が、前代未聞のペースで増え続けている今、国際問題として注目を集める難民や移民と比べ、国内避難民の問題は、おきざりにされる傾向があります。
ロンドンで行われたワークショップは、1998年に国連によって「国内避難民に関する指導原則(Guiding Principles on Internal Displacement)」が採択されてから20周年にあたる今年に国内避難民問題に対応するための機運を盛り上げよう開催されました。各国から研究者・政策立案者・援助実務者が会して、これまでのアプローチを振り返り、国内避難民問題の現状、また今後の展望について議論がなされました。JPFは、災害や紛争が原因で発生した国内避難民への人道支援を国外各地で展開してきた経験に加え、東日本大震災と福島第一原発事故がきっかけで避難を強いられた多くの避難者に対しては息の長い支援を続けてきた経緯があり、当ワークショップでの私の発表は、福島の原発避難に着目したものとなりました。