国際協力NGOジャパン・プラットフォーム(JPF) 公式ブログ

国際協力NGOをサポートする認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)のブログ。NGO・経済界(経団連、企業など)・政府(外務省など)が連携し、国内外の緊急人道支援を実施。寄付金・募金受付中。

見えないものを知り、ひとつひとつ確かめていく活動をモニタリングしました

ジャパン・プラットフォーム(JPF)の東日本大震災被災者支援「共に生きる」ファンドでは、今年の1月から、いわき市の「NPO法人いわき放射能市民測定室 たらちね」(以下、たらちね)に助成しています。JPFによる助成のねらいは、放射性物質の数値を正しく知ることで目に見えない放射能というものを知っていただき、過度な不安を取り除き、地域コミュニティ全体で放射能との向き合い方を模索することにあると考えています。

今回は普段馴染みのない【放射性物質の測定】や、希望者が多い地域に医師と共に出向く【出張甲状腺検診】の活動をモニタリングさせていただきましたので、ご紹介します。

【4月28日(金)】
【放射性物質の測定】ガンマ線(セシウム134、137)の測定

放射線には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線 の3種類があります。原発事故後、私たちが報道などで知る放射性物質の値は、ガンマ線の測定結果がほとんどです。今回はまず、ガンマ線の測定活動をモニタリングしながら、実際の測定も特別に体験させていただきました。

今回の測定で検体となったのは、いわき市南部の小名浜でとれた布海苔(ふのり)と和布蕪(めかぶ) 。
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まずは布海苔。布海苔はハサミで簡単に切って容器に隙間なく詰め、測定器にセットします。検体の量はできるだけ多く(1リットルまで)、測定時間を長くかけると、より正確な数値が得られるそうですが、今回は5時間の測定時間としました。たらちねは、結果を月毎にまとめてホームページに掲載しています。

続いて和布蕪。和布蕪を測定するためには、容器に隙間なく和布蕪を詰める必要があります。和布蕪は大きく立派なため、ひたすらみじん切りをする作業は包丁裁きに慣れない私は海藻ならではのぬめりにも苦戦し、時間がかかりました。

工夫しているな、と感心させられたのは、ガンマ線測定器の設置方法です。研究室などでは、より正確な数値を導き出すため、測定器の周りを鉛で囲むことで周囲の放射線を遮っていますが、お金がかかることと、かなり重量のある設備になるという理由から、市民の測定室では測定器をそのまま部屋の中に置いているところが多いそうです。しかし、たらちねでは鉛の代わりにペットボトルの水の入った箱を周りに積み上げ、また、床と測定器の間には水の入ったままのペットボトルを敷き詰め、放射線の影響を遮る工夫をしています。これにより、鉛の遮蔽と変わらない環境を安価で実現しています。ここでは女性ならではの知恵が随所にちりばめられていると感じました。
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【放射性物質の測定】ベータ線(トリチウム、ストロンチウム90)の測定

ガンマ線測定室の向かいのラボ(研究室)へ移動。
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こちらも検体は食品が多いですが、他に土壌や、地元の漁師さん達の協力を得て採取した福島第一原発沖の海水も測ります。検体の性質により、薬品や様々な機材を使って濃縮・乾燥・完全に灰化してから測定します。結果を得るまで約一週間から10日かかるそうです。この測定では検体を50~100gを用意し、電気炉で乾燥させるまでの説明を受けました。私は指導のもと、豆と米、土壌の測定のため、それぞれをミキサーでパウダー状になるまで砕く作業を体験しました。
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ベータ線測定は、時間も技術も必要で、且つ、測定器も数千万円と高額なため、市民による測定はハードルが高い領域だそうです。たらちねのスタッフも、もともと放射能の専門家ではありませんでした。震災前は放射能とはまるで関係なく過ごされてきた方々が経験を積み、専門家の指導を受けながら有機溶剤作業主任者・第三種放射線取扱主任者の資格を取り、熱意と清々しい使命感をもって仕事をされていました。

測定作業をする間、事務所内にはたくさんの電話がかかってきたり、測定や取材のために訪れる方がひっきりなしに訪れていましたが、その対応は見事で、チームワークにも感嘆しました。


【4月29日(土)】
【甲状腺出張検診】

福島駅近くの施設で午後から行う医師による出張甲状腺検診のため、私はスタッフの方々と共に朝、出張検診の際に活躍する「たらちね号」に検診セット(測定器、ベッド、カルテなど)を積み込んで事務所を出発。f:id:japanplatform:20170429085659j:plain


ゴールデンウィークで渋滞を心配しましたが車は順調に走行。お天気にも恵まれ、途中の新緑の山々や、小野町(福島県田村郡)の夏井川両岸に5kmにわたって植えられている美しい夏井千本桜も見ることができました。f:id:japanplatform:20170429170900j:plain


今回の医師は、桜はまだこれからという札幌から、北海道がんセンターの小野寺先生。今回は40人の方々に検診を受けていただきました。小野寺先生の優しくわかりやすい語りかけにより、不安をもって来られた方が物怖じせずに質問できるなど、納得できる検診となったのではないでしょうか。f:id:japanplatform:20170429122525j:plain


当日までのしっかりとした準備の他に、重くて大きな荷物を運んだり、車で長距離移動したりするのは重労働ですが、「自分達がなぜ、何のためにやっているのか」が頭と体に染み込んでいる皆さんなので、不測の事態でも自然なフォローをし合っていらっしゃいました。こういう「有り様」がたらちねの特長なのだなと思いました。

なお、出張検診はどなたでも受けることができます。
次回は5月20日、宮城県角田市の角田市市民センターで行う予定だそうです。

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さて、たらちねは、新しい活動として診療所である【たらちねクリニック】を開設します(5月2日から、健康相談会受付開始)。ここに至るまで、たくさんの関係者が知恵を出しあい準備を進めてきました。内覧会は5月21日に予定されていますので、またこのブログで紹介いたします。

たらちねのホームページでも、様々な情報が更新されていますので、是非ご覧ください。

地域事業部(2017年4月1日より、国内事業部から名称を変更しました) 斎藤