ジャパン・プラットフォーム(以下JPF)では、復興庁被災者支援コーディネート事業を活用して、福島県浜通り避難指示解除地域のネットワーク体の基盤強化、人材育成を行っています。
その一環として、以前もこのブログで紹介した福島県川内村での「川内コミュニティ未来プロジェクト会議」(避難指示解除になった川内地域の繋がりを取り戻すために立ち上がったネットワーク体の一つ)を支援しています。ここでは、避難指示後にバラバラになってしまった子どもたちを繋ぐ「ふるさと学習」を、川内村内外の支援団体と婦人会など地元組織と連携・調整しながら準備してきました。
この企画では、自然と共存してきた川内の文化、アイデンティティを深く掘り下げることで、新しいこれからの川内の在り方を探ると共に、それを原発事故で分断された子どもたちとの繋がりを取り戻すために体系化し、オルタナティブ教育として伝えていきます。これは原発事故により多大な被害を受けた川内で、住民が再び立ち上がる力を生かし、新しい川内をつくり、さらに何があってもへこたれず、それを守っていくためのレジリエンスモデルのプロジェクトとしてJPFではとらえています。そのために住民目線、村人目線、子ども目線でのニーズに合致したキャパシティービルディングを行っていきます。(ちなみに川内村だけでなく、川内地域ということで近隣の同じく避難指示解除になった、都路村等からも協力に来ていただいています。)
前回、私のブログでもお伝えしましたが、「川内っ子を育む井戸端会議」と称して川内村のみなさんにお集まり頂き、川内にとって大切なこと、伝えていきたいことを話し合ってもらいました。
そして、それから実際に始まった川内ふるさと学習の第一回として、川内地域の人々の生活に深く根差すイワナを体験学習の題材に取り上げました。
川内は縄文土器も多く出土し、太古から人々が豊かな自然と共存して暮らして来たことが伺えます。夏井川と木戸川が上流でぶつかり合いせき止められることで、餌となる川虫が多く生息し、イワナなどの川魚が数多く生息します。植物の種類も多く、キノコ類も数多く、木の実も豊富なことも背景にあると考えられます。炭となる原料の木の種類も多く、炭火は80年来日本一と言われており、イワナを取って炭火で焼いて食す暮らしは、昔から川内村のアイデンティティそのものであり、食べ方も他の地域にないほど多様です。たとえばイワナ飯やイワナ汁、蕎麦のつゆもイワナのだし汁を使ったり、また囲炉裏の上に藁をつるしてイワナを刺し、常に蒸していたりしたそうです。もちろん囲炉裏端には串刺しにしたイワナが火に立てかけてあるのが常でした。
こうした川内村が川内村である生活を体験するためにまず、今回の「第一回ふるさと学校」のテーマとしてイワナ釣りの体験授業を行いました。


講師の先生からは、文化の面、生態の面からお話を伺いましたが、川内のイワナは一万年前、縄文時代に海から川を上ってやってきてそのまま住みつき、独特の模様を持つようになったそうです。縄文時代から人々は川内で主要なたんぱく源としてイワナを取って食べてきたそうです。
お話しを聞いた後、子どもたちはみんなでイワナ釣りを体験し、釣ったイワナを調理して食べました。


婦人会の方々が作ってくださったイワナ汁、イワナ飯もとてもおいしかったです。


今回この企画を行った場所は、川内村にある「いわなの郷」というところですが、イワナも養殖で管理され、放射線量もモニタリングポストで可視化されていて、安心できる子どもの遊び場、居場所としても機能しているという声も聞かれました。福島県外や福島県内の飯館村などからの参加者もありました。
参加者の中で子ども同士仲良くなり、自由に遊びを見つけて川遊びしたりしていました。
自分たちで小川をせき止めたり、イワナの稚魚を捕まえてきてそこに放流したりして、なかなかみんなで川遊びということもあまり機会がないようで、子どもたちも目をきらきらさせながら元気いっぱいにはしゃいでいました。
▼前回の「川内コミュニティ未来プロジェクト会議」に関するブログは、こちら
「子どもに何を伝えたいですか? ~川内っ子を育む井戸端会議~」
写真は全て(C) JPF
ジャパン・プラットフォーム(JPF)地域事業部 山中努