ジャパン・プラットフォーム(JPF)の山中です。
今回のブログでは、NPO法人みんぷくによるレポートを紹介させていただきます。みんぷくにはJPF連携調整事業(ネットワーク形成等)や福島の浜通りにおける地域力強化事業などの中間支援活動を担っていただいております。今回は復興支援の課題の一つである「こころのケア」に関するセミナーについて、是非ご一読ください。
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こんにちは。JPFから「東日本大震災連携調整およびモニタリング事業」を委託されておりますNPO法人みんぷく(以下みんぷく)の鵜沼と申します。
今年7月から「福島広域こころのケアネットワーク」の活動が始まりました。これは、東日本大震災後、南相馬市で認定NPO法人 相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会(以下なごみ)と認定NPO法人 世界の医療団(以下MdM)が行ってきた心のケア活動を福島県内に広めようと立ち上がったネットワークです。心の傷害は誰にでも起こり得ることであり、健康的で文化的な生活を送るために、住民自ら心のケアに取り組む姿勢が大切であると考え、福島から心の課題に取り組もうとする方々が繋がり合い、専門家とも繋がり、協力し合いながら、新しい心のケアをコミュニティレベル、住民レベルに浸透させ、セーフティネットを広げようと活動しています。
運営委員会は、なごみ、MdM、F-ACTORの会、一般社団法人ふくしま連携復興センター、JPF、みんぷくで構成され、月一回程度のミーティングを重ねてきました。そして11月27日に第一回目のイベントとして「福島発みんなでつくる新しいこころのケア」のセミナーを開催しました。
第1部では、DMATとして熊本地震の被災地で医療支援活動をし、西日本豪雨ではNGOとして復興支援をし、その後福島県の双葉郡で薬剤師の健康支援事業をしている薬剤師の尾形知美氏に基調講演をしていただきました。前半は岡山県真備町での活動の中で、当時「心のケア」と意識してやっていた訳ではないが、振り返ると心のケアになっていたということを話していただき、後半は双葉郡の医療不足の問題について話題提供してもらいました。東日本大震災前は31の薬局がありましたが、現在では3店舗のみで、住民さんは薬をもらいに遠方まで行かなければならない不便な生活を送っています。子どもの薬を置いていない薬局もあり、体調を崩した子どもを連れて長時間車を走らせなければいけないため、小さなお子さんをもつ親にとっては過酷な現実です。
第2部では「拡大パネルディスカッション大会」と題し、福島県内で心のケアに何かしらの形で関わっている団体に声掛けしたところ、16もの団体が参加してくれました。「会話が生まれ、笑顔が生まれる、交流会自体が心のケア」「(賠償金等の)多額のお金をもってしまったからこそ出てくる悩み」「親の不安は、子どもに伝染する」「若者同士の飲み会が心のケア」「農業を通して心のケア」「傾聴、そばに居続けることを大切にしている」などなど、各団体の普段の活動の中での「心」に関する話がたくさん出てきました。今後期待する事としては、相談できる関係がほしい、どこに繋いだらいいか、などの連携に関する事、そして福島の現状を伝える、発信のことなどが出てきました。
初めてのイベントで運営委員会のメンバーはどれだけの人が集まってくれるか心配でしたが、当日は16団体ものパネラーが集まるという嬉しい想定外があり、また参加者からもこれだけの団体が集まる場というのは滅多にない、是非第2弾、第3弾も!と感想をいただきました。
「心のケア」と聞くと、専門家がやるもの、専門家しかできないものと捉えられがちですが、専門家でなくてもできる心のケアがたくさんありました。被災地には必ず付いてくる心のケアの課題ですが、小さなことから取り組めるし、誰でも取り組めるのです。この活動の輪が広がり、心のストレスが少しでも軽くなるような社会ができることを祈っています。