先月は、熊本、大分で起きた地震被害の現地状況を把握しニーズに応じた今後の対応のため、第一陣として本震のあった4月16日から11日間に渡り被災地に入っていました。
特に第一震ですぐに出た倒壊家屋数(その時は20)について、第二震の本震ではなかなか情報が出なかったこともあり、インフラの被災状況、家屋等の倒壊状況、そして避難所の状況等を確認しつつ、既に入っている関係団体にニーズを繋ぎながら初動調査を行いました。
(C)JPF
インフラについては水道、電気、ガスが断絶していたので、衛生と治安が懸念されました。
倒壊家屋について、全壊家屋はもちろんのこと、半壊、さらにはひび割れ、傾き、瓦落ちといった状況が広範囲に渡って広がっていることがすぐに確認され、避難生活の長期化が予見されました。
避難所の状況のアセスメントには、東日本大震災の際の学びより、国内事業部の地域担当たちが協力し、人道支援の現場において支援者が守るべき国際的な最低基準となっている“スフィアスタンダード”をもとに作成していたアセスメントシートを活用することができました。トイレの数、女性に対する配慮など、国際的な基準を大きく下回る状況も見受けられ、改善を促せるような情報共有をしました。
今回は余震が長く続き、時間をおいて倒壊した家屋もありました。また、家屋が残っていたので一度戻ったタイミングで亡くなられた方もいらっしゃいました。指定避難所以外にも市役所、県庁、公民館、宗教施設、公園、空き地、至る所の広場、スペースが避難所になっていました。
避難所となった熊本市役所の様子(C)JPF
東日本大震災の時と違い、(後から聞いた話ですが、)地震に対して全く準備がされていなかったせいか、公的機関の調整も機能していなかったと思われ、それぞれがバラバラの認識の元、バラバラにあたふたしながら動いていた感じがします。
医療もメディアに取り上げられ注目を浴びている避難所には、何チームも日赤、DMATなどの公的な医療団が入っていました。
しかし避難者で溢れている(1500人から2500人規模)にも関わらず、
「調査には来るが全部素通りされ、看護学生がボランティアでできるかぎりの支援を行っている」
といった状況もありました。そうしたニーズを加盟NGOに共有し、(行政機関などにも了解を得つつ)、支援に入って頂いきました。(熊本市中央区にはJPF加盟NGOのADRA Japanが支援に入ってくださいました。)
また、衛生面での管理も徹底されておらず(手洗い、アルコール、うがい、マスク)、感染症の懸念がありました。震災直後だからまだしょうがないと思いながら避難所を回っていたところ、すぐにインフルエンザ発生の情報が入りました。
こういった情報も東日本大震災の「共に生きる」ファンドで恊働してきたキャンナスなどに連絡すると、すぐにそこから看護師が現地に入ってくださることになりました。
また、避難所の中が乾燥しているので、インフルエンザ対策として加湿器が必要な状況をJPFの渉外部と共有し、すぐに協力企業様から加湿器のご提供をいただくような連携も実現できました。
(C)JPF
物資に関しては、米、水、毛布は比較的早く充足されたとされていますが、それ以外のNFI(Non Food Item)には充足の偏りがありました。
また米、パン、カップラーメンばかりが続き、たんぱく質、ビタミンが不足している避難所もありました。コンビニなどの流通が早めに復旧したり、地元の野菜や食材を集めて炊き出しをしたりしているところは、まだ良いのですが、その両方がないところもありました。
そういったところのニーズを加盟NGOのAAR Japan[難民を助ける会]や「共に生きる」ファンドで連携をしてきていた共生地域創造財団などにご協力頂き、迅速に対応していただくこともありました。
また、避難所によっては、震災直後から加盟NGOのピースウィンズ・ジャパンなどが女性専用のスペースを確保したり、同じく加盟NGOのセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが子どもの居場所、遊び場を確保したり、国際的な基準、価値観に沿った形で避難所支援している様子も伺えました。
現在は自宅に帰れる人と帰れない人が明暗を分け、避難所の統廃合と集約が進んでいます。さらに希望する避難所に入れなくなる人も多数いたり、避難所の運営スタッフが圧倒的に足りなかったりと、混迷を極めています。
こうした、避難所支援に対する行政、災害対策本部からの協力依頼が、JPFやJPFも参画しているJVOADを通してNPO/NGO側に来ており、加盟NGOのピースボート災害ボランティアセンターやアジア協会アジア友の会等がこの動きに協力しています。
もともと熊本は、過疎地域で行政職員も少なく手が回らず、交代要員がいない為に疲労がピークに達しており、あわせて高齢者率も高いため、支援スタッフへの支援と高齢者支援を積極的に行っていく必要があると思われます。こうした支援者への心理社会的支援として加盟NGOのプラン・ジャパンや「共に生きる」ファンドで連携してきた世界の医療団などが対応しており、また高齢者支援に関しても加盟NGOのジェンやADRAJapanが積極的に介入しております。
避難所の環境改善に向けては、企業の皆さまと連携しながら、洗濯機や冷蔵庫などニーズに合わせた調整も継続して行っております。
今回、改めて痛感したのは、今や日本はどこでも地震がありうるので、そのための備えをしなければならないということです。東海地震や東南海地震に対しては、既に訓練も頻繁に行われ、備蓄や連携体制の強化にも積極的に取り組んでいるとのことです。しかし今回の教訓は、災害が予見されていない、強調されていないところでも大災害はありうるので、そのための備えをしなければならないというところです。行政間の連携調整体制、情報交換体制(国、県、市区町村)、分野別の連携調整体制(医療、保健、流通、食糧、食料以外の物資)の構築は、もちろん不可欠です。そしてさらに個人、地域単位でも、災害発生直後3日から1週間分の水、食料(最近では栄養バランスのとれたレトルト食品や非常食も豊富)、毛布、寝袋、テント等は日ごろから準備できるのではないでしょうか。そういった状況を踏まえてこそ、NPO/NGOの得意分野を生かした活動もさらに効果的になってくると思われます。
ジャパン・プラットフォーム国内事業部 山中
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