ジャパン・プラットフォーム(JPF) 公式ブログ

緊急人道支援組織、認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)のブログ。NGO・経済界(経団連、企業など)・政府(外務省など)が連携し、国内外の緊急人道支援を実施。寄付金・募金受付中。

新型コロナウイルスと災害、新しい避難を考える ~熊本地震復興祈念ミーティング2020(熊本地震被災者支援)

世界的に拡大している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、亡くなられた方々およびご家族、関係者の皆様に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、罹患された方々には心よりお見舞い申し上げます。また、医療や行政の関係者の皆さまを始めとする感染拡大防止にご尽力されている皆さまに深く感謝申し上げます。

 さて、ここ数年の豪雨・台風被害によって、現在も避難生活を送られている方々がいらっしゃいますが、九州では、2017年から連続で、特に北部地域が大きな被害を受けています。そして、今年も豪雨などへの不安の高まる時期が迫ってきています。

【感染拡大を防止しながら、どのような支援が可能なのか?】

 5月5日、特定非営利活動法人くまもとLRネットの主催で、災害時の住民避難サポートの在り方を検討する「熊本地震復興祈念ミーティング2020」がオンラインで開催され、約30名が参加しました。熊本地震や東日本大震災における被災・支援の経験者や団体、東京から支援を継続している団体などが参加し、2つのテーマについて意見交換しました。

テーマ1:もしも今、大規模な災害が起きたら?

特定非営利活動法人くまもと災害ボランティア団体ネットワーク(KVOAD) の樋口務さんより、近々に起こる災害では、3密となってしまう避難所には避難できない状況が予想されること、そして、他地域からの団体やボランティアの支援を得ずに、地元のみでの復旧対応が必要となることへの問題提起がありました。

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テーマ1 樋口さん(右上)©JPF

 まず、現実的な避難のパターンとして、2016年の熊本地震の避難形態で多かった車中泊と在宅での避難がさらに多くなることが予想されます。水や食料は、ここ数か月で意識が高まり備蓄されている方も多いでしょう。そうすると、一番問題となるのは何でしょうか?それは「トイレ」です。熊本地震でライフラインが復旧するまでの期間、車中泊の車が集まった場所はトイレのある大きな施設の駐車場や避難所の近くでした。また、在宅避難の場合も、多くの方は避難所のトイレを使用していました。

 では、密の状態を作り出さずにトイレを確保するにはどうしたらいいのか?各家庭で、災害用トイレの準備はできるかもしれませんが、限界もありそうです。樋口さんのアイデアは、指定避難所だけでなく、町内会や校区、マンション棟ごとが「避難所」となるように行政と連携して仮設トイレを設置し(手洗い場をセットでつけることが重要)、併せて物資の受け取りを可能にする仕組みを作るというものです。

 もう一つの問題点、被災地外からボランティアや支援団体が入ることが難しくなることも、被災地にとって大きな痛手になります。被災地外からのマンパワー以外での支援方法について、JPF斎藤から皆さんに意見を聞いてみました。「オンラインでの情報提供や支援策の提案」、「被災地外だからこそできる物資支援の調整」など、被災地の中と外をつなぎ、双方向でのコミュニケーションを確立する中間支援の役割が重要になりそうです。

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テーマ1 斎藤(左下)©JPF

テーマ2:被災地でのICT活用とその後

 ここ数か月で、様々な場面においてオンラインで繋がろうという動きが加速しています。しかし、やり方もわからない、繋がるための環境すら無いという人たちも多くいるはずです。東日本大震災で、岩手県釜石市における支援活動の中心的役割を担ってきた、特定非営利活動法人@(アットマーク)リアスNPOサポートセンターの鹿野順一さんから、当時の状況と活用のきっかけについて共有がありました。

 津波により、行政システムだけでなく町全体がほぼ機能しない中で、ICTの導入は外部支援者からの提案で持ち込まれたそうです。画面上で顔を見ながら話せることのメリットは実感しつつも、当初、やむを得ずそれぞれの場所で仕事を続けていた形態は、やがてICTの積極的活用の流れを生み出し、新しい仕事の創出にも繋がっていったそうです。既存の方法では立ちいかなくなった時に、未知の方法を、半ば強制的ではあっても前向きな気持ちで取り入れていったことが、結果として、飛躍への大きな要因になったという勇気づけられるお話でした。

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テーマ2 鹿野さん(左上)©JPF

 また、熊本や東日本をはじめ、ここ数年の豪雨や地震で被災した多くの地域において、仮設住宅や在宅避難で現在も避難生活を送っている多くの方々が、新型コロナウイルスの影響によって二重の被災になっているという話もありました。長期に渡って避難生活を送る方たちのために、様々な分野が連携した、新しい見守り支援の体制が必要とされると強く感じました。

 JPFでは熊本地震被災者支援において、県域ではKVOADを中心に、市町村域では地元で復興を担うリーダーたちを発掘し、「この地域で災害があれば、彼・彼女たちに頼めば大丈夫!」という体制を共に築く支援を継続しています。長く続く復興期の支援において、地域の力を強化しておくことは、次の災害支援のための種まきにもなるのだと改めて実感しています。

JPF地域事業部

▼JPF熊本地震被災者支援 https://www.japanplatform.org/programs/kyushu-disaster2016/

▼JPF東日本大震災被災者支援  http://tohoku.japanplatform.org

▼くまもと災害ボランティア団体ネットワーク https://www.kvoad.com/

▼@リアスNPOサポートセンター http://rias-iwate.net/