こんにちは!JPF地域事業部(福島担当)の山中です。
今年度、JPFは福島に残された課題に対応するネットワーク体の立ち上げ、運営の支援などを行っています。具体的には、避難指示解除により帰還が進む川内村の「川内コミュニティ未来プロジェクト会議(以下、川ニティ)」、避難先と帰還先の繋がりが求められる飯館の村内外を繋ぐ「飯館ネットワーク」による「飯館未来会議」など、帰還後のコミュニティづくりに力を入れています。
また、専門家のみならず地域住民の方々などと連携して心のケアの裾野を広げる(心理社会的支援の)ための「福島広域心のケアネットワーク」、避難指示解除による帰還と避難先の移動の問題などで困窮状態に陥る方々のための「困窮者支援ネットワーク」の運営支援を行っています。
今回のブログでは、比較的早期に避難指示が解除され、帰還が進む川内村の「川ニティ」の取り組みをご紹介させていただきます。少子化・高齢化による地域文化の伝承の危機など、今後、日本全国で直面するだろう課題にいち早く取り組んでいる事例としてご紹介したいと思います。
川内村では、避難指示解除後に帰還した人の多くが高齢者で、子どものいる若い世帯については、避難先の近隣都市である郡山などでの生活を続け、帰還も約半数に留まっているのが実状です。そんな中、子どもたちの集まる場、つながる場を提供し、子どもたちを中心にコミュニティを再生しようと、地元の婦人会や学童保育、学識者、若手芸術家、地域観光施設、郵便局、川内で活動するNPO/NGO、任意団体等の方々で「川ニティ」を立ち上げました。
これまで、「川ニティ」では、「川内っ子を育む井戸端会議」を皮切りに、自然と共存してきた暮らしを伝えようと「ふるさと学校」を開催してきました。第一回目は、川内村で太古から人々の暮らしを支えてきたイワナをテーマにし、「いわなの郷」という施設で、イワナ釣り、イワナ料理の体験教室を行いました。第二回目は、川内村の冬の暮らしをテーマに、昔ながらの自然と共に丁寧な暮らしをされていて、映画「家路」の舞台にもなったお宅に伺って、庭や畑で餅つきやしめ縄作りの体験教室を行いました。
今年の6月には、地域学、地元学の専門で民俗学者である結城登美雄先生をお招きして、村民向けのワークショップを2日間に渡り行いました。両日とも大盛況で、活発な意見交換が行われました。村民主体で川内村の自然と共存してきた暮らしの価値を再確認し、それを体系化して形に残し、子どもたちを通して未来に伝えて行く上で非常に有意義な集まりとなりました。(尚、この回のワークショップの経費は全てカトリック鷺沼教会の皆様からのご寄付によって賄わせていただきました。)
川内村では餅つきが年に40回以上行われてきましたが、それは餅をつき、お餅とお酒をお供えするという晴れの神事でした。その日は仕事を休み、奉納された餅を食べ、お神酒を飲み踊り騒ぎました。この晴れの餅つきの日を増やすというのは、お米がお金で年貢の取り立てが厳しく設定されていた頃は、むしろ労働闘争と富の分配という意味合いもありました。
また、川内村は木戸川と夏井川が丁度交差するところにあり、水が豊かで植物の種類も多く、炭にできる木の種類が最も多いと言われています。川の滋養も豊富で昆虫も多く、綺麗な水にしか住むことのできないモリアオガエルを始め、めずらしい固有種も生息します。食べ物や飲み物も、イワナや漬物、地酒を始めこの地特有のおいしいものがたくさんあります。
これからは、自然と共存しながら丁寧な暮らしをしてきた川内村の文化と知恵を体系化し、より広く伝えていくことが重要であると考えています。避難指示解除になった地域で、帰還した人も村外で暮らす人も川内村の村民としてのアイデンティティを共有して将来的にも交流し続けることができる川内村コミュニティ形成として、JPFでも関わっていきます。
ジャパン・プラットフォーム(JPF)地域事業部 山中 努